SPトローチの有効性 — 科学的根拠と作用機序

薬剤師のつぶやき

➀SPトローチとは何か

SPトローチは、主に有効成分として デカリニウム塩化物(Dequalinium Chloride) を含む トローチ(口腔咽喉用のど飴型製剤) です。日本では「SPトローチ0.25 mg『明治』」として処方され、口の中や喉の細菌感染予防に用いられます

添付文書上の効能効果は以下の通り:

  • 咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の 感染予防

有効成分:デカリニウム塩化物の作用機序

デカリニウム塩化物は 四級アンモニウム系化合物 で、抗菌・抗真菌作用を持つ薬剤です。研究や薬理データによれば:

  • Broad-spectrum antiseptic — グラム陽性・陰性菌および真菌に対する抗菌作用が報告されています。
  • 局所作用 — トローチとして口中・咽頭粘膜に長く接触するため、局所での細菌数減少が期待されます(添付文書上の in vitro data)。
  • 抗菌メカニズムは、細菌細胞膜への作用やプロテイン凝固など、細胞機能を障害する非選択的な作用とされます。

つまり、SPトローチ自体は のどの痛みや炎症を直接「鎮痛」する薬ではなく、
細菌による感染や二次感染のリスクを減らす目的で用いられる 製剤です。臨床的には感染予防や口腔内清浄を目的とする局所治療剤です。


科学的な有効性の臨床試験は限定

現時点では SPトローチ(デカリニウム塩化物含有)の効果を評価した大規模な臨床試験 は公開されていません(添付文書でも主要な比較試験やRCTなどは記載されていません)。

したがって、SPトローチについては 抗菌作用を裏付ける in vitro・薬理データが中心 で、
→ 「感染予防に使われる製剤」であることは確立されていますが、
→ 「痛みの軽減や症状改善の効果を高レベルエビデンスで証明した論文」は乏しいです。



SPトローチの位置付け


SPトローチの強み・作用

  • デカリニウム塩化物の抗菌・抗真菌作用により、口腔咽頭の微生物負荷を低減。
  • 結果として 感染予防や症状の悪化防止 に寄与する。

エビデンスが十分ではない点

  • 痛みや腫れといった症状改善そのものの効果については、高レベルな臨床試験エビデンスが不足
    (アンブロキソールなど他成分では多数報告あり)

→要するに、SPトローチは 感染予防に用いる局所抗菌薬 であり、
「のどの痛みを直接治す鎮痛薬」としてではなく、細菌性病態を抑える目的での使用が中心 という位置づけです。


参考論文等

タイトル内容
Efficacy and tolerability of ambroxol lozenges急性咽頭痛に対してアンブロキソール含有トローチが痛み軽減効果を確認
Antibiotic/antiseptic lozenge (triple active)複合成分トローチの咽頭痛・嚥下困難改善効果のRCT
Flurbiprofen lozenge vs sprayフルルビプロフェン含有トローチの咽頭痛改善効果を示す比較試験


②主な副作用(頻度は低い)

● 口腔内の刺激症状

  • 口腔・咽頭の刺激感、灼熱感
  • 舌や口腔粘膜の違和感、しびれ感

→四級アンモニウム系消毒薬なので、
炎症が強い粘膜・びらん部位では刺激感が出やすいです。


● 口腔粘膜障害(まれ)

  • 口内炎の悪化
  • 粘膜の発赤、剥離

副作用が起きないために

  • 長期間連用
  • 1回量・回数を守らず多用
    すると、**「消毒しすぎ」**による粘膜障害が起こる可能性があります。

● アレルギー反応(極めてまれ)

  • 発疹
  • 口腔内の腫脹、かゆみ

※ デカリニウム塩化物や賦形剤への過敏症。


③使用上の重要な注意点

長期連用は推奨されない

  • SPトローチは 「感染予防用の局所消毒薬」
  • 症状が改善しないまま漫然と使い続ける薬ではない

目安:

  • 数日〜1週間程度で改善がなければ中止・受診
  • 特に「痛みだけが続く」「嚥下痛が強い」場合は、
    → 抗菌薬や抗炎症薬の適応を再評価すべき。

ウイルス性咽頭炎には直接的な効果は乏しい

  • 風邪の多くは ウイルス性
  • SPトローチは 細菌・真菌への消毒作用が主

つまり

  • 「なめていれば治る」という薬ではない
  • 補助的役割と説明するのが現実的

鎮痛効果はほぼ期待できない

  • 局所麻酔作用・抗炎症作用はない

③ 妊娠/授乳中・小児・高齢者の使用

● 妊娠中

  • 全身吸収は極めて少ない
  • 添付文書上:
    「有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用」

実務上:

  • 短期間・用量用法厳守なら 比較的使いやすい部類
  • ただし「必要性が低い場合は避ける」判断も妥当。

● 授乳中

  • 母乳移行に関する明確なデータなし
  • ただし 局所作用薬で吸収が少ない

→通常量・短期間であれば問題になることは少ないと考えられる。

● 小児

  • 誤嚥・窒息リスク
  • なめきれない年齢では注意

〇トローチが使えない場合:含嗽剤やスプレー剤を検討。


● 高齢者

  • 口腔乾燥が強い場合:
    • 粘膜刺激感が出やすい
  • 義歯使用者:
    • 義歯下の粘膜トラブルに注意

④他剤との使い分け(実践的まとめ)

病態SPトローチの位置づけ
軽度の咽頭炎△(補助的)
細菌感染予防
のどの痛みが主✕(他剤優先)
口内炎・抜歯後○(短期)
ウイルス性かぜ

⑤ 薬剤師的に患者へどう説明するか(例)

「この薬はのどの消毒薬で、
痛みを取る薬ではありません。
数日使っても良くならない場合は、
他の薬や受診が必要になることがあります。」


この一言を添えるかどうかで、過度な期待・漫然使用を防げます


まとめ

  • SPトローチ=局所抗菌・感染予防薬
  • 副作用は少ないが 刺激感・粘膜障害に注意
  • 長期連用NG
  • 鎮痛目的なら 他のトローチの方がエビデンスあり

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