薬剤師が処方意図を読み取れるレベルで、病態・体質・症状・論文的背景を踏まえて比較します。
[結論]
抑肝散加陳皮半夏がより適するのは:
〇 抑肝散の適応(怒り・興奮・不穏)を満たしつつ
〇 胃腸虚弱・食欲不振・悪心・痰が絡む
〇 高齢者・虚弱者・長期投与が想定される人
→「抑肝散が効きそうだが、胃腸がネック」な人が最大のターゲットです。
成分構成の違い
| 処方 | 構成 |
|---|---|
| 抑肝散 | 7生薬 |
| 抑肝散加陳皮半夏 | 抑肝散+陳皮+半夏 |
追加された2生薬の意味
- 陳皮:気滞改善・消化管運動調整
- 半夏:悪心・嘔吐・痰飲・胃内停水改善
→ 中枢神経作用は維持したまま、消化管耐性を大幅に強化
病態別の使い分け
〇 中枢神経症状(共通)
| 症状 | 抑肝散 | 抑肝散加陳皮半夏 |
|---|---|---|
| 易怒性 | ◎ | ◎ |
| 興奮・不穏 | ◎ | ◎ |
| 幻視・幻覚 | ◎ | ◎ |
| 夜間せん妄 | ◎ | ◎ |
→ 精神症状の「質」では差はほぼない
🔹 消化管・全身状態(決定的な差)
| 項目 | 抑肝散 | 抑肝散加陳皮半夏 |
|---|---|---|
| 食欲不振 | △ | ◎ |
| 悪心・嘔気 | ✕ | ◎ |
| 胃もたれ | △ | ◎ |
| 痰が絡む | ✕ | ◎ |
| 高齢虚弱 | △ | ◎ |
→ この差を見逃すと「効かない漢方」になる
③ 論文・研究的な裏付け(要点)
〇 抑肝散の中枢作用(共通基盤)
- 5-HT₁A受容体調節
- グルタミン酸過剰抑制
- 神経興奮の正常化
→ 抑肝散加陳皮半夏でもこの機序は保持される
〇 加陳皮半夏による臨床的補正
論文・レビューでは:
- 高齢者BPSDでは消化管症状併存例が多い
- 抑肝散単独では
- 食欲低下
- 服薬アドヒアランス低下
が問題になることがある
- 抑肝散加陳皮半夏では継続率が高いとされる報告あり
→「効くか」ではなく「続けられるか」の改善
④ 薬剤師が使える実践的見極め
問診での分岐点
次の質問をするだけで8割決まる
「最近、食欲や胃の調子はどうですか?」
回答別の判断
- 「よく食べられてます」
→ 抑肝散 - 「食欲がなくて…」「ムカムカする」
→ 抑肝散加陳皮半夏
⑤ 典型的な患者像
抑肝散加陳皮半夏は「抑肝散を“高齢者仕様”にした形」
〇 抑肝散がベスト
- 比較的体力あり
- 怒り・興奮が前景
- 消化器症状が少ない
- 小児・若年〜中年
〇 抑肝散加陳皮半夏がベスト
- 高齢者
- 痩せ型・虚弱
- 食が細い
- 痰が絡む・誤嚥リスクあり
- 長期投与予定
向精神薬との併用時の視点
- 抗精神病薬併用中:
- 食欲低下・悪心 → 抑肝散加陳皮半夏が安全
- 睡眠薬併用中:
- 朝のムカつき → 抑肝散加陳皮半夏が有利
副作用・注意点(共通+差)
| 項目 | 抑肝散 | 抑肝散加陳皮半夏 |
|---|---|---|
| 偽アルドステロン症 | ⚠️ | ⚠️ |
| 低K血症 | ⚠️ | ⚠️ |
| 胃部不快感 | △ | 軽減 |
〇 甘草量は同等
→ 電解質モニタリングは両者必須



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